本を読んで考える

本を読んで自分の頭で考える。読書日記。

独学の技法 / 山口周

何について書かれた本か

実践的な学問について教育を受けたわけでもないにもかかわらず、様々な業種で活躍する著者が試行錯誤しながら構築した独学の方法について語る本。知的戦闘力の向上が目的。

この本への期待

会社の人のおすすめで読んだ同じ著者の本がそれなりに刺激的だったので。独学は常に付きまとうのでなにか新しい発見を求めて。

感想

本などで得た情報を抽象化して使えるようにストックしておくというのは新たな気づきだった。この頃ようやくアウトプットやメモはの重要性に気がつき、その時思ったことなどを記録するようにはなったが不十分であったと気がついた。引用集やまとめ的な引き出しに加えて、抽象化して汎用的に使えるように落とし込む練習をしようと思う。

本書では効率的な学習のための道具として、以下の4つを挙げていた.

  • 戦略
  • インプット
  • 抽象化
  • ストック

戦略はインプットする際に何をテーマにし、どこを重視するかを決めておくことで感度が高まるというものである。何となく読書をしている時よりも、何かに困ってその解決策を探る時の方が効率的に読めていた。また、何かを探す時にも、対象としているものが目に入ればそこが浮かび上がるような感じがする。何に意識を集中させるかで認識能力や集中力が高まるのだろうと思う。大学生の時に株に興味を持ち、儲けるために経済学、経営学、世界地図、語学の勉強を必死にした。その時からニュースで流れてくる経済情報、企業の決算、為替の変動などには敏感に反応するようになった。

インプットは取捨選択が必要で、量より質が大切だと書いてあった。ショーペンハウアーの「読書について」にも同じことが書いてあった。今日は情報社会なので役に立たない情報や誤った情報だらけである。これらを全て読んでる暇もなければ、むしろ毒になりうるので読まない工夫が必要だと思う。ショーペンハウアーは時間をフィルターとして、現代まで残ってきた古典は読む価値があると主張していた。私は人によるフィルタリングが有効であると考えている。人といっても誰でも良い訳ではなく、例えば読書家としても知られるビル・ゲイツ氏や堀江貴文氏など、社会で成功を収めたり、スポーツ選手や大学教授など何かに精通している人の勧めるものについては読む価値があると思っている。筆者も人によるフィルターは有効であると述べていた。また、本だけではなく日常生活の様々な場面を学びの場とすることが大切であると書かれていた。

抽象化は難しい。得られた事実や知見を抽象化して汎用的に用いることのできる知識としなくてはならない。これができないと美術から数学的知見を得るなどの、領域をまたぐ考え方ができるようにはならない。普段から意識して、どうすれば他に使えるようになって、他に使ったらどうなるかを考えるクセをつけようと思う。エンジニアとしてプログラムにおいて毎日のように概念を抽象化することはしているが、知識自体の抽象化はより難しく感じる。繰り返し使われそうな共通部分をくくり出してパターン化する程度の認識しかない。以前読んだ「達人のサイエンス」では、合気道の経験から物事を極める道自体を抽象化して、極める過程でどのような課題があり、どう対処すれば良いのかまで書かれていた。これは高度に抽象化された知識の素晴らしい一例だと思う。また、黒川伊保子氏の「妻のトリセツ」という本では、女性は井戸端会議を通じて学びを得るといった趣旨のことが書かれているのを読んだ。もしかすると女性は他人の話を抽象化して自分なりに咀嚼する能力に長けているのかもしれない。私の妻を観ていても友人や会社の人がこう言っていたからどうだとかよく言っているのでこの傾向は確かにあるのではないかと思う。ベーコンの言う市場のイドラというか、一種のバイアスがかかっている気もするが。

ストックについてはブログにまとめようと思ったが、その前に筆者も勧めているエバーノートにまとめることにした。ブログだと著作権とかを気にしなくてはならないが、オフラインのテキストであれば漏れ無くメモすることができ体裁も好き勝手にできるのでいいと思う。私は記憶力が人よりも明らかに低そうなので、インプットは忘れる前提でストックしておくことは特に大切だと感じた。

筆者は教養はコンテキストが共有されていないために起こりうる機会損失を防ぐために大切であると述べていた。教養のない人間は人間性を疑うとまで書かれていた。若いうちはまだいいがもう少し年老いたら顕著に差が出始めると思う。裏でそんなことを思われているのかと思うと悲しくなるので勉強しないとなあと思った。

この手の本で、所々で出てくる偉人の名言の引用は毎度のことながら説得力があるなと感じた。これも時間や人によってふるいにかけながらも残ってきたものであり価値の高いものである。私もこのように、具体的で説得力のある引用をできるようにしたい。

2019/07/27